本年度も宮田国語塾の新規授業が開始しました。生徒さんの方はもちろん、私の方もフレッシュな気持ちで授業に取り組んでいます。
受験に向けた国語の授業をする場合、最終的な目標は志望校の入試問題で合格答案を作成し、合格点を取ってもらうことですが、この指導、なかなか奥が深いんですよね。
例えば、記述問題があったとします。究極的には、文章を完全に読解できていれば、(選択問題はもちろん)記述問題に解答することも容易なはずなんですが、最初からそんな簡単に事は運びません。人によって読解力は千差万別だからです。
語彙力も違う、読書蓄積量も違う、理解力も違えば、根気も違う、といった具合で、全く同一の条件下にある生徒というのはまずいません。人間ですから当たり前ですけれども。
そんなわけで、仮にある記述問題の模範解答をXとすると、ノーヒントでいきなり優れた解答X’を書ける人もいれば、かなりのヒントを与えないとまともな答案X”が書けない人もいるわけです。場合によっては、模範解答Xを書き写すしかないレベルの人もいるでしょう。
で、私が思うに、プロに習うメリットの一つは、問題に対したときに、どこまでのヒントを与えられるべきで、どこまでのヒントを与えられずにいるべきかの判断をしてもらえるところではないかと。
例えば、小問1の解答Xに対して、解答者(受験生)が考えるべき内容がA1〜A20まであったとします。私が(一応)プロとして授業中に考えているのは次のようなことです。
< ケース1 >
◯◯さんはまだ読解力に乏しい。問題に関連する段落の文章はよく理解できていないだろう。まずA1〜A20まで解説して文章の理解を深めてから、解答を書いてもらおう。◯◯さんのいつものレスポンスから考えて、解答の骨組みはおそらく間違わないだろうが、乱雑な解答になる可能性が高い。書き終わったら解答を見せてもらった上で、過不足を指摘して、うまく字数に収めたり、読みやすい順序の文章にする練習をしてもらおう。
< ケース2 >
◯◯君は随分一緒にトレーニングを積んできたし、この種の問題は得意としている。この問題に関連する段落の文章がよく理解できていることも、別の小問の解答から判断するに間違い無い。一度ノーヒントでやってもらおう。ただ、◯◯君は引っ込み思案なところがあるから、自分からヒントを求めることはしないだろう。書き出すまでにかなり時間がかかるようだったら、こちらからA5ぐらいまで助け船を出そう。それで無理そうだったら、A8まで。そこまでヒントを出して書けなかったら、こちらで模範解答の要素を示して、解答要素をまとめる練習に切り替えた方がいいな。
< ケース3 >
◯◯さんはこの種の文章が好きだったはず。だから、授業の最初にした文章の概説だけで、かなり本質的な部分まで掴めている可能性が高い。それに、理屈を先に聞くより、とりあえず問題を解くというスタイルが好きなタイプだから、この小問については間違っても良いから書いてもらうとしよう。とりあえずはノーヒントで押し切ろうか。作成した解答がよしんば優れた解答なら、どの点が良いかを詳しく解説して、自信を持ってもらうとともに、その姿勢を守るよう指導しよう。解答に不備が多ければ、そこを起点に、A15〜A20を補足説明しよう。それで十分だと思うけれど、念のためA10あたりからの知識や考え方がしっかりしているかも、尋ねてみてチェックしておこう。
こんな感じで、同じ文章・問題であっても、一問一問、解説・アプローチを人によって変えています。自分で勉強したり、あまり経験のない人に教わったりすると、ここら辺が単調になるんだろうと思います。私も最初(18歳頃の話ですね(笑))はそうだったかもしれませんが、場数を踏んでくると、さすがに経験的に分かるようになります。自分では、あれこれ考えるというより、結構直感的というか、瞬時に決定していることが多いように思います。
昔、ダウンタウンがやっていたギャグ。
浜田 : 駆け出しの役者。
松本 : ちょっとクネクネした演技指導役。
浜田「おはよう!」
松本「ちが〜う!君の『おはよう』は全然なってない!もう一度役になりきってやってみろ!」
浜田「お、おはよう!」
松本「ちが〜う!ちが〜う!全然なってな〜い!もう一度!」
浜田「おは、よう」
松本「またちがう!全然ちが〜う!もう一度!」
(何度もこの応酬が繰り返される)
松本「君にいいことを教えてやろう。あの三上博史は千通りの『おはよう』が使い分けられるんだ。そう、千通りのな!すべての『おはよう』をマスターしているんだ!それに比べて君は……。」
浜田「す、すみません。『おはよう!』」
松本「またちがう!全然ちが〜う!もう一度!」
……私は、この業界の三上博史を目指そうと思います(笑)。
あ、俳優名は役所広司でも山崎努でも香川照之でもOK。
え、オチを知りたいって?それはまたダウンタウンのお二人に直接聞いて下さいね。