塾の選び方・塾の裏話 #4

前回の「塾の収益構造」という話題を進めて、今日は「塾の集客ノルマと退塾引き留め工作」について書いてみましょう。

一般的な塾にとっては、「売り上げをできる限り大きくする=生徒さんをできるだけ多く集める or できるだけ多くの講座をとってもらう」というのが経営学的な答でしたが、ここに塾を選ぶ際の大きなポイントがあります。

もちろん生徒さんにおいで頂かないことには、塾の運営は成り立ちませんから、適切な手段で生徒募集活動を行うことに何の問題もありません。実際、当塾もウェブサイトなり新聞広告なりで、広報活動を行っております。

ただ、前回お話しした「塾の収益構造」を考えると、生徒募集活動が、ややもすると塾として不適切なものになる可能性は十分にあります。具体的には、(ちょっと露骨な表現ですが)集客ノルマが教室長や講師に課せられていたり、在籍している生徒を絶対に辞めさせないという退塾引き留め工作がマニュアル化されていたりするわけです。

確かに、我々のような同業者から見ると、涙ぐましく可哀想な気がしなくもない話ではあります。しかし、ユーザーの方々からすると、こうした活動に巻き込まれては大変です。当然のことながら、そうした塾や教室は教務がおろそかになっているはずですから。ここでは、そうした教室・塾を「集客第一・教務第二主義」とでも名付けておきましょう。

以下、生徒の保護者様や私たちの友人から聞いた「集客第一・教務第二主義」の実例を挙げてみます。

● 塾の生徒が新しい生徒を連れてきて入塾させると、金品がもらえるケース。

確かに、塾を運営していると、生徒さんが別の生徒さんを紹介してくれるというケースはあります。同じような性格・成績のお子さんであることが多く、指導の上でも大変ありがたいお話です。
しかし、金品をエサに生徒を営業部隊に仕立て上げるなんていうのは、下品極まりない話だと思います。「○人を入塾させたから、金券○○○○円をゲット!」なんて生徒同士が話している塾にわが子を預けたいとは思えません。塾としての一線を越えている気がします。

● 退塾する旨を伝えると、猛烈な引き留め工作にあうケース。

当塾にご見学においでになる保護者様から、時々伺うケースです。
「○○塾に通っているんですが辞めさせてくれなくて……。」
「○○セミナーを辞めると言い出しにくくて……。」
私どもからすると、あっさり辞めればいいだけでは?と思うんですが、何やら猛烈な引き留め工作にあうとの由。

某有名中学受験塾に子どもを通わせていた友人から聞いた話です。子どもに中学受験をさせる可能性があるため、とりあえず塾に通わせていたものの、生活ペースが合わなくなってきたため、退塾を申し出る。すると、担当の講師が飛んできて、「お母さんはおかしいですよ!」「今辞めると絶対に合格出来ませんよ!」「頭がおかしいんじゃないですか?」「今辞めると待っているのは不合格だけです!」とまくし立てられる。

他人に向かって堂々と「頭がおかしい」と言える人の方がよっぽど頭がおかしいのではないかと思うんですが……(笑)。しかも小学低学年の頃の話ですからね。一般に、女性が恫喝や脅しに弱いということを悪用しているんでしょうが、かなり悪質なケースだと思います。もちろんその場で退塾させたとの由。正解です。こんな恫喝がマニュアルとしてまかり通っていることを、同業者として恥ずかしく思います。

当塾の場合、運営・定員の都合から、退塾される際は一月前にお届け頂くようお願いしていますが、それ以外にあれこれと言うことは断じてありません。退塾届けを受けた際に、しつこく引き留めるのは塾としての品位を落としますから。そもそも、お辞めになる方を引き留めるのに労力を割くより、新しい方においで頂けるよう、授業の質を高め、広報活動を適切に行う方が効果的だと思うんですよね。

塾における講師研修とは、「授業内容」の研修ではなく、「いかに生徒数を増やすか」「いかに生徒を退塾させないか」「いかに多くの講座を取らせるか」の研修であることの方がずっと多い、ということも付言しておきましょう(笑)。

ちょっと他塾からは不興を買いそうな記事ですが、塾を取り巻く様々な事情をよくご理解頂き、賢い選択をして頂く手助けになれば幸いです。

結局は、塾の勝手な都合に基づく意見に寄りかからず、ご自分の目で見てお考え頂くのが一番。

当塾としても、ご利用いただいている方には、できる限り客観的な意見をお伝えするよう努力していきたいと思います。