次の問題を見て下さい。
敬語として間違っている部分を正しく直す問題です。
灘中学 平成17年出題
次のA~Eは、店員と客のやりとりですが、それぞれ店員の発言におかしな所があります。傍線部を、正しい言い方に改めなさい。(ブログでは傍線部を赤字にしました。)
問題D
客「感謝フェアへの応募はレジでできるのですか。」
店員「申し訳ありません。郵送のみになっております。専用はがきでご応募するようお願いします。」
灘中の問題はいつも面白いところを突いてきますね。
保護者の皆さんも考えてみて下さい。
少し空白を置いておきますので、答を考えてから下の方をご覧下さい。
まず市販問題集(赤本)の解答。
「ご応募されるようお願いします。」
ブブー!間違いです(笑)。
確かに、「れる・られる」というのは尊敬の助動詞です。しかし、その前がマズいですね。
「ご○○する」という表現は、原則として謙譲表現。
例えば、「ご案内する」「ご招待する」といった形ですね。
ここでの主語は、客(応募する人)であり、店員からすると尊敬語を使わねばなりません。文脈的には、「ご○○下さる」という尊敬の形がよいでしょう。
また、合否には関係ない部分だと思いますが、「お願いします」よりも敬意の高い謙譲表現「お願い致します」または「お願い申し上げます」の方が、さらによいでしょう。店員としてはこちらの方がレベルが高い(笑)。
ということで、正解は、
「ご応募下さいますようお願い致します。」
「ご応募下さいますようお願い申し上げます。」
ちなみに、灘中の問題は、ここを取り上げていませんが、「申し訳ありません」の部分は議論が分かれているところです。私としては次のように理解・整理しております。
A.かなり厳格な考え方
「申し訳ない」というのは一語の形容詞である。したがって、「申し訳」と「ない」を分離することは出来ず、「申し訳ありません」や「申し訳ございません」というのは誤用だ。本来は「申し訳なく存じます」とでもすべきだ。
B.やや現状追認的な考え方
「申し訳ない」というのは確かに一語の形容詞ではある。しかし、もとはと言えば、「申し訳」という名詞と「ない」という形容詞が合体した語に過ぎない。したがって、「申し訳」と「ない」に分離して考えることが可能なはずで、「申し訳ありません」や「申し訳ございません」というのは誤用ではない。
まぁ、中学入試レベルなので、どっちでもいいんですけどね(笑)。テストで問われたと仮定して、私なら、「申し訳なく存じます。」と書きますね。Aの考えからもBの考えからも、正解になりますから。
ということで、パーフェクトな店員が話せば、下記の通り。
「申し訳なく存じます。郵送のみになっております。専用はがきでご応募下さいますようお願い申し上げます。」
ちょっとレストランの店員としては堅すぎる感じですが、お客さんも雇い主も喜んでくれるんじゃないでしょうか。
こうした問題を見ていると、灘中の国語の問題って、「日常で使う言葉を大切にする」ということを非常に強く求めているように思います。灘中に限りませんが、難関中を目指す小学生や保護者さんは、常日頃から自分たちが使っている言葉に敏感になっておくことが望ましいですね。それが結局は合格への近道だと思います。小学低学年から難関中学入試に向けて猛勉強!なんてのは逆に遠回り(というか危険)です。
そうそう、灘や東大寺などの難関中学の出題傾向について書こう書こうと思っているんですが、なかなかそこまで手が回りません。まぁ、気が向けば書いてみたいと思います。
パート3に続きます。