今日も株価が下がりまくっているようです。この記事を書いている時点で日経平均株価は8000円台を割り込み、7000円台に突入しています。
「日経平均が100円下がると、私の資産は数億円減るんだぞ!どうしてくれるんだ!」
…なんてことはあるはずもなく(笑)、株のかけらも所有していない私は、どこか遠い世界の話を聞いているような気がします。(もちろん、経済局面の後退が、様々な面に影響を及ぼすことは分かっていますよ。ここでは株で運用される自己資産の目減りについて話しています。)
さて、今日は金曜日なんですが、前々週の金曜日にも株価が暴落していました。まさにブラック・フライデー。
black fridayとは、「不吉の金曜日」とも訳されますが、そもそもは、金曜日がキリストの処刑日であったことが語源になっているようです。転じて「市場大暴落の日」の意味にもなるわけですが、詳しくは辞書から引用してみましょう。
【証券】 魔の日, 市場大暴落の日, ブラックフライデー 《曜日にかかわらず使われる; もとは 1869 年 9 月 24 日の大暴落を指したが, 1873 年と 1929 年の金融恐慌も金曜日に激化したので一般的に暴落の日を表わすようになった》.
(リーダーズ・プラス(研究社)から引用)
株価暴落は金曜日と縁が深いのかもしれませんね。
で、こんなときに思い出す曲があります。
Steely Dan “Black Friday”
Steely Dan はアメリカのバンドで、ある意味究極的な音楽集団。ジャズ寄りのロックとして、もうこれ以上の存在はないと断言できます。詳しく説明し出すとブログ50回分ぐらいになってしまうので(笑)、これぐらいにしておきますが、彼らの歌詞がまた味わい深いんですよね。皮肉・あてこすりに充ち満ちた諧謔…。ネイティブでも解釈が難しいとのことで、正直私にも意味不明なところが多くあります。
この “Black Friday” は分かりやすい歌詞なのでご紹介。
ちょっと気だるいブルース進行の曲です。
When Black Friday comes
I’ll stand down by the door
And catch the grey men
When they dive from the fourteenth floor
ブラックフライデーがやってきたら
扉の側にしっかり立って
14階から飛び降りてくる
青ざめたやつらを受け止めてやるんだ
時間がないのでかなり適当な意訳ですが、
この4行だけでも、かなりの情報量です。
“grey(=gray)” という単語ですが、灰色(グレー)という色は、日本と同じく「陰気さ」の隠喩になります。他にも、「(心配などで)白髪の」「(不安などで顔が)青ざめた」「活気のない、憂うつな」という意味もあります。
ビルの14階から飛び降りてくる人は、おそらく、
「株価暴落のため陰鬱な顔をさらに真っ青にしており」
「心労のあまり白髪まじりになっている」
「グレーのスーツを着込んだビジネスマン」である…
というような解釈ができましょうか。
(しかも “men” で複数形だから何人も飛び降りている!)
“the fourteenth floor” というのも意味深です。今、wikipediaで調べてみると思った通りで、
“In some countries, the number 13 is considered unlucky and building owners will sometimes purposefully omit a floor so numbered. Hence, the 13th floor is given the number 14.”
(http://en.wikipedia.org/wiki/Thirteenth_floor より引用)
つまり、「13」は不吉な番号なので、「13階」を「14階」と称することがある、ということです。(日本でも病院に行くと3階のつぎが5階になっていることってありますよね。)
ここでは、14階から飛び降り自殺を試みているわけですが、実際は不吉な13階から飛び降りていることになります。
ここで話は最初に戻りますが、”Black Friday” の語源は、キリストの処刑日が金曜日であったこと。キリスト教に詳しいわけではないので言及は避けておきますが、”the 14th = the 13th” は、このあたりともイメージ的にかけてあるのでしょう。
で、この歌詞の主人公、飛び降りる者を救う正義漢なのかと思いきや、後の歌詞で借金を踏み倒していく情景が描かれています。つまり、飛び降りる者を救うのは、自分の貸した金をとりっぱぐれないように、という考えからのようです。自殺しようとする者を引き止めて、そこからさらに金を巻き上げる、この悪辣さ!
何とも救いようのない描写ですが、面白い歌詞です。
株価暴落から話は全くそれてしまいましたが、また来週もこの歌を口ずさむことになるんでしょうか…。