先日も少し触れましたが、国語の授業で物語文を取り上げる際、登場人物の関係を図示して説明することがしばしばあります。
大学入試ではほとんど見ませんが、中学入試だと、登場人物の関連を把握することがポイントになっている出題が時々あるからです。
もちろん、登場人物がごく少数の場合は図示までする必要はありませんが、主要登場人物が多くなってきた場合は、図に表してみると文章の見晴らしがとてもよくなります。
授業では、実際に生徒自身に人物関係図を書いてもらうことがあります。文章をきちんと読めていないと、登場人物の相関をうまく書き表すことができません。教える側からすると、生徒がどれだけ文章を理解できているかを把握することができるというわけです。
また、教わる側からすると、登場人物の関係を意識的にチェックすることによって、文章を立体的に理解できるようになるという効能も期待できます。
実例を一つお見せしましょう。最近の板書の一部です。字が汚い?すみません、返す言葉がございません。かといって、清書するのも面倒なので、そのままお見せします(画像をクリックすると大きくなります)。
少し前の奈良学園中学入試の問題文です。問題文自体は引用できませんが、クラスの中の人間関係が結構ややこしいことになっている場面が取り上げられています。ご興味のある方は、図をご覧になりながらお読み下さい。
「博士」は、「サンペイ君」とも「内山君」ともよくコンタクトを取っているので、友人であることが分かります。かなり仲がよいことも伺えますが、こじれてしまった人間関係が背景にあり、「博士」は「サンペイ君」にも「内山君」にも気を使っていることが分かります。
文章から、「内山君」が皆に好かれるクラスのリーダー格であることも読み取れます。彼の行動は、必然的に「クラスのその他の男子」に影響を与えることになります。「内山君」が「サンペイ君」をのけ者にしたため、「クラスのその他の男子」も「サンペイ君」を仲間はずれにしています。
孤立しがちな「サンペイ君」の親しい友人は、「博士」だけの様子。穏やかな性格の「博士」は「サンペイ君」とグループを組んだような形になっています。「サンペイ君」が仲間はずれになってしまったとばっちりを受けて、「博士」も仲間はずれに。
こうした状況を「クラスの女子」はよく観察しています。ある女子は、「博士」と「サンペイ君」が仲間はずれになっていることを、学級会で告発します。また、バレンタイン・デーには、女子一同から「博士」へとチョコレートが贈られます。ここでは「同情」という言葉がピッタリでしょう。
学級会で女子からの告発を聞いた「柿崎先生」は、皆の前で、「博士」「サンペイ君」「内山君」に事の真相を尋ねます。しかし、どの子も仲間はずれの事実を否定します。
小学生も高学年になれば、皆の前でいじめの罪を認めたり、いじめられていることを認めたりはしないでしょう。怒られるのも嫌ですし、自分がいじめに遭う弱者だと認めることも嫌ですから。小学生の言葉を文字通りに受け取ってしまう「柿崎先生」は、クラスの人間関係を把握できていない、かなり鈍感な人だということが分かります。
なお、問題文の中では、同一人物が「姓」で表記されていたり「名」で呼ばれていたりで、人物関係の理解に混乱をきたす元になっています。
こういう複雑な人間関係が問題になっている場合(といっても実社会に比べれば極めて単純ですが……)、ぜひ登場人物関係図をつくる練習をしてもらいたいと思います。読解力向上の一助になるはず。
いい文章が見付からない場合、家族やクラスのメンバーを登場人物と考えて作ってみるのもよいかもしれませんね。なお、
田舎のおばあちゃん → いじめる → おかあさん
おかあさん → うらんでいる → 田舎のおばあちゃん
なんてのが出てきて、もめ事が起きても当塾は一切責任を負いません。あしからずご了承ください(笑)。
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