センター試験国語の問題点
大学入試センター試験が2019年度で終了し、2020年からは新共通テストに生まれ変わるという予定になっていますが、新共通テストは記述重視の試験になるとの由。個人的には悪くない試験制度変更だと思っています。
少し前にも書きましたが、センター試験はとにかく「読む」試験。出題文のみならず、とりわけ選択肢を吟味検討し、不要な選択肢を落としていくタイプの試験です。
もちろん、本文をしっかり理解する読解力があり、その読解をもとにまぎらわしい選択肢をスパスパ落として行くというのが理想なんですが、現行のシステムだと、読解力がなくてもそれなりになんとかなってしまうところがあります。少なくとも、理系志望で二次試験に国語がないという受験生なんかは、あまり労力を割かずにサッサと乗りきる方が良いのではないか(実際に生徒さんにはそうアドバイスしています)。
逆に読解力があっても、著しく厳しい時間制限によって大きく失点してしまうこともあります。現在のセンター試験国語は、評論・小説・古文・漢文の大問4問で80分。単純計算すれば大問一つあたり20分。各大問には6問〜8問程度の小問がありますが、20分の中で選択肢だけではなく、出題文も読まねばなりません。時間的な余裕の無さはご想像頂けるかと思います。
そんなわけで、高校にしても予備校・塾にしても、ほとんどの国語教師が現センター試験を「国語力を判定するにはかなり問題のあるテスト」と認識しているのではないかと思うんですが、現実として多くの受験生に課せられている試験である以上、対応せざるを得ないんですよね。
大学入学共通テスト・記述式問題導入の問題点とその解決
報道を見ると、大学入学共通テストでは記述式が導入されるとのことなので、大学側・文部科学省側も同じような認識を持っていることは想像に難くありません。
現時点では、記述式の導入される試験は国語だけとの話なんですが、問題は採点処理ですよね。数十万人の受験生の記述答案を、同一のクオリティをもって平等に採点するというのは至難の業。
一体どうするんだろう?入試記述答案の採点を任せられるほど人工知能やコンピュータ工学が発展しているとも思えない。仮に発展しているとしても、「人生を左右する可能性すらある入試答案の採点・評価を機械に任せてもよい」という社会的コンセンサスは出来上がっていないよな……。
なんて思っていたんですが、先日の報道を見ると、受験生が出願した大学が採点を担当するという方向で、文部科学省が検討を始めたとの由。
それなら納得ですよね。というか、現時点ではそれしか方法はないでしょう。
以下、朝日新聞ネット版2016年8月19日07時59分の記事からの引用です。
新テストの記述式は各大学が採点へ 当面国語のみで検討
大学入試センター試験に代わり2020年度に始める共通テストで導入する記述式問題について、文部科学省は、受験生が出願した大学が採点を担う方向で検討を始めた。国立大学協会入試委員会(委員長=片峰茂・長崎大学長)の提案を受けた。科目は当面、国語のみとする。記述式はマークシート式と違って機械的に採点できず、どう処理するかが問題となっていた。案が採用されれば、導入にめどがたつことになる。
(中略)
一方、今回の改革について「検討に積極的に参画する」としてきた国大協も入試委で採点方法を議論。国語で出題▽入試センターはマークシート式の採点を担う▽記述式を利用する大学は受験生の記述式の解答をセンターから送ってもらい、採点する——という独自案をつくり、7月末に文科省も同席した会議で示した。
入試委は独自案について、各大学が2次試験の合格発表までに採点すればよく、時間に余裕があるので出題の幅が広がると判断。また、センターが示す共通の採点基準に加え、各大で独自の基準を採用できるとしている。
導入される記述式問題についての予想 (現代文について)
当国語塾としては、手ぐすね引いて新テスト記述問題の導入を待ち受けているんですが(笑)、2016年8月の時点ではこんな予想を立てています。
1.出来るかぎり主観を排するため、文学的文章は敬遠され、論理的文章が中心になる
現センター試験で「悪問」と糾弾されがちなのは、たいていの場合「小説」問題なんですよね。小説を完全に客観視するのは難しいですし、そんな小説の読み方をしても何も面白くありません(試験だから仕方がありませんが)。
ある程度の主観を交えることが前提となっているジャンルを出題するのは、記述問題の採点を前提とすればかなり難しいはず。そうした理由で小説はパスされるのではないか。随筆もそれに近い理由で出題されにくい気がします。
ということで、出題文は評論的な文章が中心になると予想しています。それも論理明晰な文章、筋道がしっかり通っているような文章。
例えば、問題提起→他者の考え→他者の考えへの批判→自説の論拠→自説(結論) というようなスタイルを持つ典型的な評論文です。
2.記述問題の内容は、筆者の主張を制限字数内でまとめさせる問題がメインになる
上記の予想が正しいとして話を進めると、筆者の主張を制限字数内でまとめさせる問題がメインになるのではないかと思います。加えて、筆者の主張の理由をまとめさせる問題、傍線部分を詳しく説明させる問題ぐらいでしょうか。
ちなみに、語彙や漢字の問題は現在と同様選択式で十分ですから、今とあまり変わらない出題スタイルになるのではないでしょうか。
3.記述の制限字数は60字〜100字程度になる
20字程度だと記述問題と騒ぎ立てるほどのものではなく、導入の意義に乏しいでしょう。かと言って、150字を超えると大量の答案を平等に採点することが難しくなってくるように思います。
ということで、一般的な大学の入試に見られる字数制限と大きく変わらない字数制限になるのではないか。具体的には100字ぐらいが限界でしょうか。私の予想としては、当たるも八卦当たらぬも八卦ですが、「60字から100字程度」としておきます。
以上、あくまでも個人的な予想ですのであまりアテにはしないで下さいね(笑)。
将来の受験生へ
ただ、将来の大学受験生(2016年時点での中学2年生以下が新試験を受験することになります)に伝えておきたいのは、新試験のためにテクニカルな小手先の技術をみがく必要はおそらくないであろうということです。
大学側や文部科学省側が制度改正に踏み切るのは、今よりももっと本質的に受験生の国語力をテストし評価できるようにしたいという考えがあるからであって、小手先的に乗り切れる試験を作ってくるとは思えません。
であってみれば、文章をしっかり読解し、その読解をきちんと文章に表せる力を養うことに勝る対策はありません。つまり、真面目に合理的に国語を勉強するしかない。真面目かつ合理的に国語の勉強をしている人なら、何も恐れる必要は無いはず。
「俺は理系で国語は全然ダメなんだよ〜、記述なんてやだよ〜、なんとか小手先のテクで乗り切りたいよ〜」なんて人には困った試験制度改正(改悪?)になりそうですが、そんな人は心を入れ替えて頑張りましょうね。
宮田国語塾としても、受験生のご希望に沿えるよう、大学入学共通テスト導入に備えて今後も調査・勉強を重ねておきたいと思います。