どんな試験であれ、もっとも大切なのは「敵を知る」こと。実際の試験内容を知らずして、対策・勉強のしようがありません。大学入試だろうが、資格試験だろうが、漢字検定だろうが、その原則に変わりはありません。
ということで、漢検1級の過去問やデータを分析してみましょう。
まず、財団法人日本漢字能力検定協会(以降「漢検協会」とします)の発表している問題をご覧下さい。
(下二つのリンク先はPDF書類となっています。やや重いデータですのでご注意を。)
問題例 財団法人 日本漢字能力検定協会
(全級の問題へのリンクページとなっています)
http://www.kanken.or.jp/mondai/index.html
漢字検定1級問題(平成19年度第1回検定)
http://www.kanken.or.jp/mondai/pdf/1m.pdf
漢字検定1級解答(平成19年度第1回検定)
http://www.kanken.or.jp/mondai/pdf/1k.pdf
いかがでしょうか。問題のレベルがお分かりいただけたかと思います。「面白そう!」と思った方は是非チャレンジして下さい。勉強自体も面白い過程になると思います。「何だこれ?吐き気がするよ!」という方は、お引き取りいただいた方が……(笑)。
問題を見て分かることは、日常生活で使う漢字はほとんど出題されないということです。「そんな漢字の勉強をして何になるのか?」とおっしゃる方もいるようです。しかし、 私から言わせれば、その質問自体が愚問なんですよね(偉そうだなぁ)。
日常生活で使わない=不必要、と考えるのであれば、中学校以上で勉強する内容はほとんど不要なものばかりです。英語が必要になる人はおそらくごく僅かでしょうし、数学が生活上必要になることもほとんどない。歴史なんて知らずとも生きてゆくには問題ありませんし、化学式を使うこともまず無いでしょう。国語なんて勉強せずとも日常会話はできます。
しかし、そんな考えの行き着く果ては、無味乾燥な生活でしょう。やはり、そんな生活に安住せず、自分の能力を伸ばしてゆき、知的な学問や優れた作品を理解できるようになりたいですよね。それは人生における大きな楽しみの一つじゃないでしょうか。
漢検1級についても、日常生活で全く使われない漢字群だからこそ、勉強するのが面白いと言えるんじゃないでしょうか。漢検1級を受けようとする物好きな人なら(失礼)、深く肯いていただけるかと思います。付言しておくと、漢検1級で出題される漢字は、漢文や明治期の文語文を読むという観点からすると、かなり役立つ漢字・熟語群であります。(もちろん、すべての出題問題が漢字の正当な用法に基づいている、とまでは申しませんが。)
ついでと言っては何ですが、漢検批判に反論しておきましょう。協会からお金を貰っているわけではないので、どうでもいいんですけどね(笑)。
よくある批判は、「けら」や「ブランコ」を漢字で書けたからといって、どんなメリットがあるのだ、という意見でしょう。こうした批判は、テレビが漢検を取り上げる際、熟字訓や当て字を中心にしていることから来ているんじゃないでしょうか。
でもそれは大きな誤解です。出題された問題を実際にご覧頂いた方はお分かりになると思いますが、「熟字訓・当て字」に関する出題はほんの一部です(問題番号6番のみ)。点数で言えば、200点満点中10点しか配点されていないんですね(しかも読み問題中心)。むしろ、漢文的・文語文的な文脈から理解すべき漢字や熟語が、出題の中心に据えられています。
まぁ、テレビである以上、視聴者の受けを気にすることは仕方がありません。聞いたこともない漢字の問題を出すより、意味や実物を知っているけど漢字で書けないという問題を出した方が、分かりやすいんでしょう。
もちろん、合格を目指す以上、熟字訓・当て字が出来なくてもいいとは申しません。実際、「けら」や「ブランコ」なんて、目をつぶっていても書けるレベルになって欲しいところです。「螻蛄」「鞦韆」、あらよっと!という感じですね(笑)。
次は合格率データを分析します。
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