年が明けてからというもの、ひたすら中学入試過去問を使った授業の毎日です。例年のことながらなかなかハード。受験生もあと少し頑張って下さいね。
さて、先日授業で用いた灘中の国語知識問題を取り上げてみましょう。2016年度の問題です。灘中に合格するつもりなら最低でも6割、できれば8割ぐらいは正解してほしいですね。大人だったら簡単なはず。この程度で満点が取れない?それはちょっと当塾においで下さい(笑)。
次の各文の傍線部が正しければ○を解答らんに記し、まちがっている場合は同じ字数で正しい表現に直しなさい。
1.かれはこの地域の犯罪をなくそうと心血を傾けて対応してきた。
2.細かいところまでは目が回らず、失敗が起こってしまった。
3.伝統的な作法にのっとり、結婚式が古式ゆたかにとり行われた。
4.問題の焦点がぼやけてきた場面での、的を射た意見に感心した。
5.私では役不足ですが、精いっぱいつとめさせていただきます。(灘中学2016年入試問題から引用)
それでは大人の方も考えてみてくださいね(少しスペースを空けておきます)。
問題1
全力を尽くして事を行う場合、心血は「注ぐ」ものです。よってこの文章の表現は間違っています。正しくは「注いで」とせねばなりません。ちなみに「傾ける」のは「精魂」です。
問題2
「目が回る」というのはとても忙しい様を表す慣用句。I’m very busy now. という感じですね。文意には沿いません。細かいところに注意を行き渡らせるのは「目が届く」。したがって答えは「届かず」。
問題3
「ゆかしい」という言葉があります。現代語の意味としては、
1.上品ですぐれており、人柄にひきつけられるような感じがする。
2.昔がしのばれて、何となくなつかしい感じがする。
というところなんですが、2の方は、「古式」という言葉とよく用いられます(言語学で言うところの「共起性」が高い)。ということで正解は「ゆかしく」。
で、授業準備のためにポピュラーな過去問集の解答を見てみると驚きの説明が。
「古式ゆたかに」は、昔からの伝統的なやり方に従うようす。
ええっ!そんな表現誰が使うねん、どう考えても間違いやろ、と思いながら辞書を調べるとこう記されています。
明鏡国語辞典
こしき【古式】
[名]昔からの方式。
「古式ゆかしい行事」
参考:「古式ゆかしい」は、近年「古式豊か」とも言うが、本来は誤り。
現代新国語辞典
こしき【古式】
昔の方式。ふるい方法。「─にのっとる」「─ゆかしい行事」
参考:「古式ゆたかに」という言い方はあやまり。
う〜ん、やっぱり私も誤りだと思うけどな。
デジタル大辞泉にはこう記されていました。
文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」では、「古くからのやり方にのっとった様子で」を表現するとき、本来の言い方とされる「古式ゆかしく」を使う人が67.3パーセント、本来の言い方ではない「古式豊かに」を使う人が15.2パーセントという結果が出ている。
多分灘中の先生も「間違い」と認識して出題されていたんだと思います。
某問題集は答えを「○」としていますが、本当は「ゆかしく」が答えでしょう。
ちなみに新明解国語辞典(第8版)は次のように、しれっと用例を並べています。
こしき【古式】
その事について昔から行なわれている、決まった型ややり方。
「古式ゆたかに」
「古式にのっとる」
「古式ゆかしい催し」
う〜ん、個人的にはまだ間違いだと思いますが、「攻める国語辞典」である新明解国語辞典は他の国語辞典に宣戦布告していますね(笑)。私が中学受験生に新明解国語辞典をお薦めしないのはこうしたところが理由です(とてもいい辞書ですけれど)。
問題4
「的を射た」は、表現がうまく要点をつかんでいる様子。よって、本問の答えは「○」。「当を得る」(道理にかなっている)とよく似ていて混乱しがちですが、間違わないようにしましょう。現時点では「的を得た」はやめておいたほうが無難な表現。
問題5
これ、大人でもよく間違っていますよね。そういう意味で危うい表現なので、私はあまり使いません。こちらが正しく使っていても相手方に誤解されては馬鹿らしいですし。「役不足」の正確な意味は「本人の力量に比べて役目が不相応に軽いこと」。本問の文章では、その逆のことを言いたそうですよね。つまり「役目に比べて本人の力量が不相応に低いこと」を表したい。とすれば、正解は「力不足」。
この最後の問題、「役不足」「力不足」はうまい整理の方法があるので、またいつか別記事にしましょう。
ちょっと今日は「時不足」なので、このあたりで。


