我が家のジュース事件

前回、選挙の話を書いていて思い出した話を一つ。もう時効にかかっているので書いても構わないでしょう。

ずいぶん前のお盆の頃の話です。ある地方議会議員から、ジュースの詰め合わせがいきなり送られてきました。

私が結婚するより随分前、父・母・妹と在学中の私の四人で暮らしていた頃の事なんですが、私が大学で政治学をかじっていたことを除けば、残りのメンバーは政治に全く興味なし(笑)。私も「政治学」こそ面白いとおもっていましたが、「現実の政治」はアホらしくてほとんど興味なし。そんなわけで、家族全員、その地方議員と面識はゼロ。

ジュースの詰め合わせには、「御母堂のご仏前にうんたらかんたら」なんて書いてありますが、亡くなった父方の祖父祖母も政治にまったく疎い人間。面識があるはずもありません。

私も人間、個人的なお付き合いをさせていただいていて、葬儀においで下さったという関係の方なら、有り難く贈り物を受け取りもし、御礼もします。しかし、縁もゆかりもない政治屋さんから物を受け取らされる筋合いはありません。

母「なんか知らんけど、酒屋さんがジュースの詰め合わせを無理矢理置いていったんよ〜。送り主を見たら全然知らん議員さんやし、断ったんやけど、『送り主さんに怒られる』の一点張りで……。」

私「ははーん、この議員、選挙も近いし票を買ったつもりやな。面白いことしてくれるなぁ。」

父「ラッキ〜!早速ジュースを飲もうや!」

私「あかんってば、お父さん(笑)!」

生前の父は本当にアバウトで、細かいことは全然気にしない人。公職選挙法の該当条文を上げて父母にしばし説明です。

私「まぁ、今回のが公職選挙法に違反しているのは明白、それは置いといても、こんなジュースごときで我が家の歓心を買えると思いくさってるのがムカつく!一回お灸を据えとくよ。」

早速電話です。もちろん、酒屋さんではありません。某議員の事務所です。

私「◯◯に住んでおります宮田と申しますが、◯◯議員事務所でしょうか?」

所員「はい、そうです。」

私「本日、供養として結構な品物をお送りいただいたんですが、お間違えじゃありませんか?家の者も亡くなった祖母も◯◯さんとは面識がございませんし。」

所員「いえ、まぁ、そこはその、あれでして……。受け取っていただければ。」

私「でも、いただく理由もないので返品したいんですが。」

所員 (面倒くさそうに)「いや、いいです。飲んでおいて下さい。」

私 「いえいえ、返品させて下さい。もらう筋合いはありませんので。」

所員 (ちょっと苛ついて)「ですからいいんですよ、もらってくれれば!」

絵に描いたような所員の対応に、笑いを堪えるのが必死なんですが、そこは大人の対応です。

私 「公職選挙法ってご存知ですか?」

所員「えっ……?」

私「ご存知のようですね。例えば、◯◯条ですと「……」という文言により、議員サイドからのこうした物品の授与が明確に禁じられています。あと、◯◯条にも触れる可能性が高いですが、条文の説明をしましょうか?」

所員 (態度豹変)「誠に申し訳ございませんっ!いかが致しましょうか!」

どうも、ややこしい筋の人だと思われている模様(笑)。

私「ですから、先程から申し上げているように返品させて下さい。できれば今日中に。」

所員「畏まりました!」

私「今回の件は『勘違い』でなさったと理解しておきますが、あんまり放置されるようでしたら、最寄の選挙管理委員会か警察署にお伝えしますので、そのつもりでお願いしますね。」

所員「畏まりました!」

電話を切って5分後ぐらいに、所員らしき人が回収に現れました。息せき切って(笑)。

まぁ、彼らも仕事でやっているわけで、あんまりヤイヤイ言うのもどうかとは思うんですが、それで我が家まで「共犯」にされては堪りません。

父「お前はほんまに堅いねんから!もらっとけばええのに(笑)。」

私「何言うてんの、お父さん。公選法を平気で破るようなアホ議員に『買収してやった』なんて思われたら末代の恥やで。それに、仮にウチがややこしい筋で頭の回る奴だったら、結構な金額を巻き上げられてたはずだよ、あの議員。家の名誉も保たれたし、タダで議員に啓蒙してあげてるねんから、善良な行いやと思うねんけどなぁ(笑)。」

自前のジュースを飲みながら、父と笑いあってそんなバカなやりとりをしたのがつい最近のことのように思い出されます。父が世を去って13年になろうとしているんですが、未だに寂しくなってしまう事がある私は、まだまだお子様なのかもしれません。