国語豆知識 「頭が下がる」「頭が上がらない」の違い

中学受験生に慣用句の指導をしていると、まぎらわしい慣用句がよく出てきます。生徒さんがよく勘違いするパターンの一つとして、「頭が下がる」「頭が上がらない」の混同があります。

大人も結構勘違いしていそうなので、一度整理しておきましょう。


「頭が下がる」

<意味>
自然と尊敬したり、感謝したりする気持ちになる。
心から感心して尊敬する気持ちになる。
感心させられる。
思わず尊敬の念がわく。
敬服しないではいられない。

<例文>
彼は大学生でありながら、働いて学費を自分で支弁しているらしい。それでいて成績優秀なんだから、本当に頭が下がるよ。


「頭が上がらない」

<意味>
(恩義や負い目があるせいで)対等につきあえない。
相手に負い目を感じて対等にふるまえない。
(ひけめや恩義を感じて)恐縮しっぱなしだ。
負い目があったり相手の力・権威に圧倒されたりして対等にふるまえない。

<例文>
先輩はいつも高級店でごちそうしてくれるんだ。この間なんかは、一人前三万円のお寿司を御馳走になってさ。もう頭が上がらないよ。


どうでしょうか。例文からイメージはつかめましたでしょうか(例文は語義を身に付ける上でこの上なく有効な手段です)。どちらも「頭は下がっている」状態ですが、意味するところはかなり違いますよね。

短くまとめれば、こんなところでしょう。

頭が下がる」は、「敬服・尊敬の念」。
頭が上がらない」は、「恐縮の念」。

ただ、ここは国語塾ブログ。もう一押し行きましょうか。ChatGPTに絵を描いてもらいました。慣れていないのもあって、絵を描いてもらう方が文章を書くよりはるかに時間がかかりました……。

「頭が下がる」のイメージ図はこんな感じ。

「ふつうに上がっていた頭」→「立派な人や事柄に出会う」→「思わず頭を下げてしまう」といった感じですね。

次に、「頭が上がらない」のイメージ図はこんな感じ。

「もとから下がっていた頭」→「さらに恩を受けてしまう」→「下がっていた頭は依然として下がったまま」といった感じですね。

ご理解いただけたでしょうか?なに、まだイメージがわかない?

そんな時は、「頭が下がる人(敬服・尊敬の念を抱いてしまう人)」と「頭が上がらない人(恐縮の念を抱いてしまう人)」を具体的に思い起こしておくといいんじゃないでしょうか。

宮田君ってほんま立派やわ〜頭が下がるわ。
大地君には世話になりっぱなしで頭が上がらないよ。

てな感じで。えっ、例文が悪い?そうかもしんない(笑)。「宮田君」「大地君」のところはお好きな人に置き換えてくださいね。